5.0
最も深く、大きな転換の章
鼠から始まる物語の第3章。
前章のバタフライで、たまきちゃんをきっかけにした兆しはあったけれど、
梟では互いの心の闇間に深くダイブしてゆきます。
本当に惚れるとは、「全てに於いて、その人だけが例外になってしまう」という名言、
エゴだと言いながら、相手の幸せを思いやる優しさがあるからこその、自信のなさ、苦しい逡巡、そこからの食い違う覚悟。
弱くなる今ケ瀬と対照的に、受け身だった恭一がふとしたところで見せる変化にゾクリとする。
縛られる側から、縛る側へ、
今ケ瀬への呼びかけが「おいで」から「来な」に。
そして、最後の別れ。
なぜ、どうして? これがベストの結論なのか? ・・そうかもしれないと、釈然としない気持ちを抱え、登場人物たちとともに痛みを感じ、迷いながら、彼らの幸せを願わずにいられなくなる。
深い、切ない、愛おしい。
見事なまでの心理描写、
気づいたら、静かに涙があふれている、そんなピュアな第3章。
そして、最終章の鯉が待っている。
行定監督で映画化も決まったそうですが、
第1章の鼠から、絶対に飛ばさずに読んでほしい、名作です。
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