5.0
村崎百郎先生の鬼畜全開の物語
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マルキ・ド・サドが好きな方にお勧めのSMの要素が極めて高い作品。
出色は村崎先生の鬼畜的嗜好を体現したポチと呼ばれる中年男性。
この人物の言い回しや、わざとらしく天を仰ぐ仕草が面白い。
いくつか挙げてみよう。
「約束と処●膜は破るためにあるんだよ」
「あんなエロを見せつけられちゃあ、発情するのが人の道ってもんだろうが」
ケーキを作りながら、「ケーキがよければ景気も回復回復ぅ〜」
ポチはかわいそうな捕らわれの兄妹をさんざんいたぶっておきながら、最後は彼らに大金を持たせて解放してやるのである。
彼曰く、兄妹ばかりがいじめられて、M気質の自分はいじめてもらえないから出て行って欲しいとのことなのだが、半分は事実で半分は口実だろう。
京極夏彦氏によると、村崎先生は良識のあるいい人だったが、自らの中にある鬼畜の部分から目を背けることができなかった人だったという。
その人間性がポチに投影されているように思えてならない。
こんなに面白い村崎先生の作品がもう新しく作られることはないと思うと、残念で仕方がない。
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