5.0
「お約束」の拒否
読み始めると、止まらなかった。
何ポイント献上したかわからん。
私がオムニバスを好きなこともあるが、それにしても、毎回、見事な安定感、そしてテンポのよさ。
何が凄いって、作品として、一貫して冷徹にルールを守っているところだ。
主人公は依頼人の寿命と引き換えに呪殺を請け負う死神みたいな存在だが、あくまで漫画の主人公だ。
だから普通は、もうちょっと融通が利く。
つまり、ルールを破る。
漫画の展開として、都合のいいことをやる。
具体的に言えば、「いくら何でもこの人が死ぬのは可哀想だろ」という人は、殺さない、とか。
言い方は悪いが、「死んでもいい」と読者が感じるようなキャラを、被害者に設定する、とか。
一度は請けた依頼でも、それが依頼人にとってあまりに悲劇的な結末(例えば勘違いによる呪殺など)をもたらす場合には、それを教えてやってキャンセルさせてやる、とか。
そういう展開は、基本的に、ない。
そういう甘さが、この漫画にはない。
物語としてサクッと感動を演出できるはずの「お約束」よりも、冷徹にルールを守ることを選んでいる。
そのぶれない姿勢は、作品として、とても美しいと思った。
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