5.0
「秘密であることが、嘘じゃない。」
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表紙とあらすじを見た時に、「アイドル?!芸能界?!早寝電灯先生、どうしちゃったんですかー!」と、心で叫んだ自分。
というのも、早寝電灯先生は、『転じて恋と生き』『君にはふれると鳴るとこがあって』等の、心を震わすストーリーを「読ませる」作者さんだと思っていたので…。
しかし、杞憂でした。普通の甘キュンな芸能界モノではありません!(そういうのを期待している方には、地味で肩すかしに感じるかも。)
自分が思うに、これは「人間の持つ二面性(多面性)の肯定」に、恋愛を絡めたストーリーかと。
アイドルの塁(攻め。表紙右)は、ステージでは完璧な王子様だが、私生活はルーズで豪放磊落な性格。
雑誌のインタビュアーの嶺人(受け。表紙左)は、芸能人のようにオン/オフを持つ人間の内実に興味があり、その「心の箱庭」の風景を見たい、と思っている。
※以下、ネタばれ含みます。ご注意ください。
子どもの頃から相手に合わせて「自分」を演じ分けていた塁は、腹黒、嘘つき…と非難された事で、アイドルになってそのレッテルを背負ってやる!と思っていたが。
嶺人が初めてのインタビューで「二面性は服の表と裏地のようなもので、アイドルはそれを着てステージに立つ。なんにだってなれる夢の体現だ。大丈夫、ちっとも変じゃない。秘密があることが、嘘じゃない。」と言ってくれ、塁は「嘘を演じてるのではなく、どっちも本当の俺。」と思えるように。
これって、例えば優等生の深夜徘徊を「いい子を演じるストレスを、素の自分を出して解消する」と見ずに、どちらもその子の本当の姿なんだ、と見るようなものかと。
しかし他人の二面性に無意識に心引かれ、受け入れる嶺人も、「女装」という違う自分になることでバランスをとる秘密があり。
偶然それを知った塁は、共有出来るものがあって、嬉しさの余りに踏み込みすぎ、さらに恋愛感情もあって、気持ちがなかなか通じない(笑)。
嶺人の女装癖は、幼児期の「魔法少女」の変身モノの番組や小さな中庭など、押し隠していた原体験が元にあり。
塁という、どちらも本物の嶺人だと、理解してまるごと愛してくれる相手が現れて、「ずっとそう言われたかったなんて、そんな贅沢覚えたくなかった。」と嬉しくて泣く嶺人…。
後日談の番外編もあり、ほのぼの終わります。
エロは最後に少しだけなので、ストーリー重視の方にオススメします。
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