5.0
細部と、哲学と
「闇金ウシジマくん」が終わってしまい、ファンであった私はちょっとしたウシジマくんロスに陥っていたが、その穴を埋めるような快作がスタートして、胸が躍った。
いささか語弊はあるが、「悪徳弁護士が主人公の闇金ウシジマくん」とイメージしてもらって構わないかと思う。
「闇金ウシジマくん」でもそうだったが、作品の骨子を支えるのは、裏社会の圧倒的なディテールである。
この作者は、マジで取材の鬼だと思う。
もちろん、私たちの多くは裏社会の実情に詳しくないし、現実がこの漫画のとおりなのかはわからない、というか、多分、そんなわけはなくて、いくぶん漫画的な誇張やデフォルメはあるのだろう。
しかし、一般読者としては「うわ、マジでこんなことありそう。知らんけど」と思うしかない、そういうレベルのリアリティーを、脚色を含めて作品の中に構築するのが、この作者は非常に上手い。
以前、「闇金ウシジマくん」のレビューの中で、「子どもですら単純な勧善懲悪なんか信じない時代に、ウシジマくんがヒーローになり得たのは、明確な哲学を持っているからだ」という意味のことを書いたが、その点は、本作の主人公である九条も全く同じだ。
「私は依頼人を貴賤や善悪で選別しない」
「法律の世話はできるが、人生の面倒は見られない」
世間一般の倫理観からは外れているが、九条はあくまで自分の哲学を守って生きている。
九条の横顔にウシジマくんの姿がだぶって、私はちょっと感動してしまった。
この感慨は、「闇金ウシジマくん」を最後まで読んだファンなら、わかってくれるのではないかと思う。
また、相変わらず、ダークでありなら、きっちりエンターテイメントとして成立させる手腕も素晴らしい。
ウシジマくんなき時代に、新たなダークヒーローの誕生を告げる、期待度抜群の作品。
ウシジマくんファンは、必読である。
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