3.0
設定が死んでいる
「死神に依頼して『自分を殺した』相手を殺してもらえるが、依頼者は地獄に落ちる」という筋立ての漫画。
設定の上で面白かったのは、死神への依頼者が「幽霊」である、という点だ。
復讐モノの漫画は腐るほどあるけれど、この設定は、新しい。
生きた人間が復讐するとなれば、様々なリスクがあるけれど、死人となればノーリスクである。
そこに「地獄に落ちる」というペナルティーを持ち込んで制約を作ったことも、上手くバランスがとれていると感じた。
また、死神のキャラはよくわからないが、手当たり次第、というわけではなく、やりたくない仕事はやらない、というスタンスも、今後ストーリーを膨らませるためにはいいのでは、と思った。
しかしながら、悲しいほどに盛り上がらない。
10話まで(最初の女性のエピソードが終わるまで)読んだが、よくよく考えてみると、復讐の依頼者が死者である必要性をあまり感じない。
そりゃ、何と言っても死んでいるわけですから、無念ではあろうけれど、話としては「普通の殺し屋」に「生きた人間」が復讐を依頼する、というのと、さして印象が変わらない。
つまり、設定が活かされていない。
正直、大した話ではないのにテンポが悪い、という感想を持った。
「依頼者が死んでいるからこそ」の仕掛けがもう少し練られていたなら、トリッキーな復讐モノとして、佳作になり得た設定だとは思うのだけれど、残念ながら、設定が死んでいる。
死んでいるという設定そのものが、死んでいるのである。
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