5.0
抜群の構成力
同窓会、という名目で廃校に集められた高校生たち。
そこで始まるデスゲーム。
というあらすじを読んだだけで、サスペンス漫画にある程度通じた読者なら、「ああ、またそういう系ね」と思うだろう。
私もそうだった。
事実、本作は、「そういう系」の漫画のお約束というか、突っ込みどころというか、「もう飽きたよそういうの」という要素をことごとく備えている。
硫酸を自動で噴射する装置や携帯の電波を妨害する装置が都合よく閉鎖空間を作り出し、圧倒的な頭脳と人心掌握力とトチ狂った価値観を持つサイコ高校生が登場し、追い詰められた高校生たちがいともたやすく過剰なまでに狂い出す。
もういいよ、そういうのは。
それは確かにそうなのだ。
そうなのだが、この漫画には、掃いて捨てるほど量産されている「そういう系」の作品の中で、圧倒的に優れた点がひとつある。
それは、構成力である。
この構成力は、素晴らしい。
本作は、現在進行形ではなく、既に終わった事件を、生存者たちが語る、という形式で描かれている。
サスペンス映画では珍しくない手法で、「ユージュアル・サスペクツ」なんかはその最高傑作だと思うが、漫画でこの手の構成をこれほど巧妙に利用した作品を、私は他に知らない。
事件を生存者たちが語る中で、「おいおい、それをここでばらしちゃっていいんかいな」という、一種のネタバレが、ちょくちょくある。
しかしもちろん、それは本当のネタバレにはなっていなくて、真のネタバレのサプライズを増すのに一役買っている。
あるいは、その途中のネタバレ自体が、巧みなミスリードになっている。
読者としては、「この先はわかっていたはずなのに、わかっていなかった」というような体験を連続して味わうことになり、これが実に魅力的である。
トータルとしては「どこかで見たような」材料ばかりなのに、私はどうしても読むのをやめられなかった。
「そういう系」とか言ってなめていた私が間違っていた。
その反省と自戒を込めて、星をひとつ、足した。
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