5.0
魅力的な中世スペインの歴史。
『スペインって余り書かれてないから私が書いてやろうと思った』 と作者がどこかで語ってらした、一見地味な中世スペイン…… を、これ以上なく魅力的に描いた作品である。
人の愛憎や欲、そうしたものに振り回されて動く歴史……だけでなく、スペインの風土がきちんと描き込まれている点が素晴らしい。読むと、砂塵、灼熱の太陽、木陰の安らぎ…… そんなものが感じられる。
私が特に好きなのは序盤、主人公ドン・ペドロの少年時代から反乱を経て王権を確立するまでのくだりである。
ドン・ペドロの父への思慕、母との軋轢などが非常に切ない。
父からは疎まれ、母には裏切られ…… 恋女房のマリアさんがいて、本当に良かったなぁ……
出版社都合か?
中盤からラストが駆け足のダイジェスト版であるのが非常に惜しいが、それでも読む価値のある作品だと思う。
めちゃ面白いのに、レビューの少なさが悲しい。みんな読んで……!
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