4.0
尖った設定に頼らないキャラとストーリー
高3の名取悠太は1年生の瀬戸口和司から一目惚れをした付き合って欲しいといきなり告白される。断ったのに、避けてもキレてもめげずに鬼メンタルでまとわりついてくる…。
名取と瀬戸口のキャラクター造形がすごく好きです。
"普通さ"を魅力的に描くって難しいと思うのですが、それが成功してる。
名取は普通のいい子。頭がいいわけでも悪いわけでもなく、先生に反抗的でもなく、友だちとの諍いもなく、変なプライドもコンプレックスもない。進路の悩みもない。仲良しの同級生梶と鉄人とも良好な関係。
家でも、10歳の双子蒼太&湊のいいお兄ちゃんとして気負わずごく当然のこととして面倒をみている。金持ちでも貧乏でもなく、両親とも普通に会話し、頼まれた用事はこなし、喧嘩も不和もない。
ちょっと特徴的なのは、瀬戸口につきまとわれない対策で、梶に「ブチギレたらどうか」、鉄人に「彼女がいるとかテキトーに言っておけば」と言われた初めて、あぁそういう手もあるか!と気付くような性格だということと、学園祭で女装したときに可愛くて女子に嫉妬されたという容姿ぐらい(とはいえ普段は普通の男子高校生枠)。
瀬戸口も、名取につきまとうけど病的さはなく、むしろ良識があって十分好感が持てるいい子。名取妹の湊ちゃんがカッコいいと言うぐらいで、ことさら外見を印象づけもしない(女子に人気ある風な1シーンがある程度)。
この匙加減が勇気あるし作者の力量。
特殊な設定、尖った性格やエピソードなどわかりやすい手法を取らず、この主人公たちでストーリーを動かしたのってほんとすごい。主に瀬戸口が名取に絡むシーンの笑いのセンスも大好き。
ただ、瀬戸口の関係者は幼なじみのユキしか出てこないのがちょっと物足りない。名取の迷惑にならないようにと考える思いやり・思慮深さや、双子ちゃんの面倒を見たりユキのお願いを聞いたりする優しさ、文化祭の準備を投げ出して名取のところに行こうとはしない責任感があることなどはわかるのですが、もっと瀬戸口の魅力を知りたかったなー。
瀬戸口が名取を好きになったきっかけが明かされ、名取が瀬戸口を受け入れるところで終わるので、ええーーー!!!ここで終わりーーーー!?!?と叫びました。
ぜひぜひ続編をお願いします!!!!
ちなみにハグまでなピュアなふたりなので、そっち方面を期待する向きには合わないです(笑)
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