5.0
ゆっくり進む優しくて温かいラブストーリー
恋ヶ窪に住む平凡なサラリーマン杜拓人(もり たくと)と隣人の晴海冠(はるみ かん)のハッピーエンドのラブストーリー。
本当にいい話だなぁと読み返すたびにしみじみ思います。心があったかーくなるので、疲れたときや寒い日などに特にオススメです!
拓人はやりたいことも夢も特になく、さえない毎日を過ごしている。ある日ヤケ酒を呑んでアパートの階段下で寝てしまったのを晴海に助けられてから、誘われてときどき部屋で一緒に晩ご飯を食べるようになる。
いつもラフな格好で通勤もしてなさそうな晴海を怪しく思っていたが、会社を辞めて漫画家を目指し、半年は投稿作を書き、残りの半年で生活費を稼いでいると知る。不安定な生活だけど好きなことをしている晴海がまぶしく見える。
少し近づいたふたりだが、作品を描き上げた晴海はアパートを引き払い、連絡先を交わさないまま分かれてしまう。半年後、デビューが決まった晴海が戻ってきて…というのが4話まで。
まずはここまで読んでみて、気に入ったら全話どうぞ!
5~8話でようやくキスの先まで進み、9話がインターバル、10~12話で一緒に住むことを決めて引っ越し、13話が同棲後のちょっとしたけんかと仲直り、14話は引っ越し当日の夜と拓人のひそかな誓いの話。
ハラハラドロドロな展開ではないので、区切りごとにゆっくり読み進めるのもアリです。
晴海が、拓人は小さな優しさをいくつもくれると独白するシーンがあるけど、それは拓人も感じていて、これ、一方通行だとツラいけど、ふたりはちゃんと双方向。
ほんとステキな関係で、お似合いだなと思います。
アパートの階段下に転がっていて拓人がいつも起こしてあげるサボテンは、拓人自身であり、晴海でもあり、読んでいる私でもあり、あなたでもあって。
自分の小ささにめげるし、確かにちっぽけな存在なんだけど、きっと誰かが見ているよ、花は咲くよという作者からのエールがこもっていて、勇気が出ます。
たったひとりでも大切な人の存在は大きな力になるし、平凡な日常がとても愛おしくなるよ、という作者らしいメッセージも大好きです。
本作が好みでまだ「おはようとおやすみとそのあとに」が未読ならぜひ!
開人&伊介がお互いを大切にしながらそれぞれの夢に向かう日々を描く名作です。
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