4.0
淡々と綴られる所がかえってリアル
獄中の犯人と会い、その実像に迫る形で描かれたルポタージュ。
その罪状、生い立ち、罪に至るまでの経緯と心情…… 調べて想像すれば、いくらでも深掘りできそうであるが、本書はそれを敢えてしない。
実際に会ってみたイメージ、行った会話、その罪状…… 淡々と綴られるそれは、想像を挟まない 『明白なこと』 だけであるため、却ってリアルである。
私は常々、凶悪犯罪者は認知構造に問題があるのではないかと考えているが、本書を読んで、より確信が深まった。
認知構造の問題とは、ざっくり言うならば 『他者の痛みを想像する能力に欠けている』 または 『感情のコントロールが不得手』 という2点に集約される。
この2点に問題のある人は、集団の中で生きにくく、問題を起こしがちである。
それが、たまたま大きな問題となって現れたのが、本書で紹介されている凶悪犯罪なのだろう。
凶悪犯罪を起こした人たちは 『悪を為そう』 としたわけではなく、社会的な善悪の基準を理解せず、そこからズレてしまっただけである……。
だから同情せよ、というのではなく、それを私たちがどう考えるかを問うのが、本書の目的ではないだろうか。
最後に私の答を書くならば、
『為そうとして為される悪よりも、為そうとせずに為される悪の方が恐ろしい』
矯正の見込みがない彼らを、再び世に出すべきではないと思う。
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