2.0
中立のようで、違う
死_刑囚との面会を基にして描かれた漫画。
メディアで報道される凶悪犯たちのイメージと、実際に会って話してみた彼らの実像のズレ、みたいなものが、テーマのひとつになっていると思う。
ある部分、報道によって勝手に犯罪者のイメージを作り上げてしまうマスコミや、それを鵜呑みにする社会に対する警鐘にもなっていて(正解にはなろうとしていて)、自分の目で確かめるまでは、中立であろう、という意志は、評価されるべきかもしれない。
しかし、実際、この漫画が中立であるかと言えば、違う。
淡々としたタッチだが、このスタンスの作品ならば、もっと淡々とすべきだと私は思う。
もっと冷徹に事実を見つめようとすべきだと思う。
少なくとも、「出会った死_刑囚の中に悪人はいなかった」という作者の弁には、私は拭えない違和感を持った。
何をもって悪とするか、という難しい話は抜きにしても、それはかなりの部分、作者の「印象」と、「本当の悪人などいないのだ」というような信条に裏打ちされたものではないか、と疑ったからだ。
確かに、彼らは別に、人間の域を逸脱したモンスターではないのだろう。
マスコミの報道が煽るのより、ずっと「普通の」人間なのだろう。
しかし、その「普通の」人間が、どこでどう一線を越えるのか。
それを、感情も印象も抜きにして、正確さと緻密さだけをもって語るのが、こういう作品の役目ではなかろうか。
私はそう思うから、この作品も、おそらく作者が嫌悪するであろう上滑りのマスコミとそう変わらない、たちの悪いプロパガンダ程度にしか感じられなかった。
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