4.0
優しすぎる寓話
絵柄はヒトを選ぶだろうし、わたしは決して好みではないのだけれど、童話のような物語の雰囲気と世界観にはマッチしている。
上手い・下手はともかく、絵柄が漫画に「合う・合わない」はとても大切なことだと思うので、そういう意味では、いいと思った。
絵も、筋立ても、シンプルだけれど、描かれているものはなかなか奥深い。
それは、ちょっと雑に言うと、善人も悪人も、懸命に生きているんだ、ということなのではないかと思った。
本作は、寓話的な印象の漫画だ。
しかし、実のところ、大体の寓話よりも遥かに優しい。
昔話だって何だって、多くの場合、問答無用の「悪者」が出てくる。
それは、略奪を繰り返す鬼ヶ島の鬼だったり、カニを騙した猿だったり、雀の舌を切る老婆だったり、豚を狙う狼だったり、シンデレラを苛む継母だったりするのだが、彼らはあくまで「悪者」であって、物語の中で、ある意味都合よく、やっつけられたり、不幸になったりする。
私たちは、それを「当然」として読む。
でも、本当にそうだろうか、と。
鬼には鬼の、狼には狼の人生があって、彼らもまた、必死に生きようとしているのではないか、と。
そんな、漫画だと思った。
それは、作品として甘すぎる、という見方もあるだろうし、私みたいに汚れた人間には、やはり、「綺麗すぎる」と映った。
しかし、誰一人として単純な「悪者」にはしないぞ、ただ悪いだけの悪者なんか、この世にいやしないんだ、というこの漫画の志みたいなものは、とても美しいと思った。
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