5.0
同世代で深く共感…
トーンは低めで、淡々と切なく進んでいくストーリー。明確なメリハリや楽しさはあまりないので、好みは別れるけど、とりわけ主人公と同じ30〜40代の女性には、共感するところが多い、傷ついた心に優しいストーリーだと思う。
不倫が原因で心を病み東京を捨てて、大嫌いだったはずの田舎に結局帰った主人公。法事で田舎ならではのわかりやすい不条理に正面切ってNG突きつける鈴木ユキノ法事事件をやらかします。「普通」が当たり前の世界で「普通ではない」ことが、主人公始め性同一性障害の同僚や取引先の男性、主人公と正反対に自分を無にして生きてきた友人などの関わりで浮き彫りにされていきます。
けど、決して勇者の話ではなくて、しっかり起こってくる現実の落とし前に傷つきながら、それでも生きていくストーリー。まだ途中ですが、それぞれの登場人物がこれからどんな人生を歩むのか、すごく気になっています。
若さだけじゃ生きていけないこともわかるし、うまく行かないことばかり詰んでいる気もするし。目の前の現実が負けと言われているようで、なかなか受け入れきれない。他人の芝は青いけど、実は、その他人もギリギリのところで生きていたり色々あるのよね。
狭いエリアの常識や他人の目に怯え、流されていく他人の言動にもハネ返せない自分にイラつき、そういう生きづらさを抱えて生血を流しつつ、なんでもない顔をして必死に生きるというか。
同世代なので、等身大に受け止められます。久々に読みごたえのある、道標的な作品に出会えた気がします。一気に課金してしまったし、コメントもつい長くなってしまった…。
- 7