5.0
すばらしい!
映画を観てるようでした!
通勤電車の窓から見える灰色のビル群に故郷の風景を重ねるヒロイン。その横顔をひと時見るために、毎日同じ電車に乗るヒーロー。いろんな匂いが漂う満員電車でヒロインが覚えた「気分の良くなる香り」
そして、それらの伏線が後半からラストにかけて「丁寧」に拾われていきます。
物語の進行がまるでヒーローそのもののように、暴力的で謎で不気味に始まり、ヒロインとともに恐怖し途方にくれます。そこから彼への愛情を育てていくのだから、ヒロインは大した女性です。ヒーローは、私が読んだTL小説最凶かもしれません。言動ひど過ぎ、金も無けりゃ才能もない生活能力もない。ヒロインより年下なら、高卒でバイト先に就職したのかな。知り合いにナンパや合コンの女寄せに使われるくらいモテる。あのデリカシーのない性格に外見が良いせいで思春期から女に不自由したことがないとなると、あそこまで不器用に拗らせるのか…。しかしいつのまにかヒロイン目線になっていき、そういう所すらかわいく見えてくるから不思議です。書き手の力ですね。次作を楽しみに待ちます。
by
セロファン
- 5