5.0
ものすごく楽しくて、あり得ないほど美しい
大人になってからこれほど漫画で笑ったことはなかったし、これほど新刊を待ち望んで日々を過ごしたこともなかった。
本当に、素晴らしい作品だった。
まず、「これ」を漫画にした才覚に脱帽する。
基本的には二人の高校生が河原でだべっているだけという、「こんなの漫画になるのかよ」という題材だが、圧倒的な会話のセンスと、卓越した「間」の表現が、見事に作品を成立させている。
読んでいるうちに、「こんな漫画ありかよ」という最初の感想は、「これは漫画だから出来たことなのかもしれない」という思いに変わった。
そういう意味では、およそ漫画らしくない場所から始まって、実に漫画らしい地点に到達した、稀有な作品だと思う。
私は、毎回げらげら笑いながら、この漫画が終わってしまうことを、どこかで恐れていた。
青春時代を謳歌する若者が、心のどこかでは、いつかそれが終わることを恐れるみたいに。
彼らが、「いつまでもこれが続くといいのにな」と思いながら、そして、本当はそれがあり得ないと知りながら、日々を生きるみたいに。
私は、セトのことが、ウツミのことが、ただただ大好きで、彼らに会えなくなってしまうのが、たまらなく寂しかった。
けれど、やはり、終わった。
青春というひとつの時代にも、いつか終わりが来るように。
ただ、その終わり方というのは、私のあらゆる想像を超えて、それまでこの漫画が積み上げてきたものをある意味で壮大に裏切りながら、これ以外ではきっと駄目だったんだ、と感じさせるような、ものすごく斬新で、あり得ないほど鮮烈なものだった。
私は、これほど美しい漫画の終わらせ方を、ほとんど知らない。
私の青春は遥か昔に終わり、この漫画もやはり終わり、けれど、ふと懐かしくなってページをめくれば、漫画の中で、セトとウツミは、いつまでも青春なのだった。
だから、漫画というのは素晴らしくて、でも、そんなの、ちょっと、ずるいと思った。
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