2.0
作り物の情念
何となく、最後まで読んでしまった。
その点、読ませる力はそれなりにあったことは認めざるを得ない。
しかし、特に後半、私は完全にしらけていた。
不倫相手の女も、主人公である妻も、なかなかエキセントリックな描き方をされているけれど、それがまあ、嘘臭いことこの上ない。
私は、人間の情念とか狂気とか、常軌を逸したような類の感情に、ひどく惹かれる。
その反動なのか、情念っぽい作り物、狂気っぽい作り物を、安っぽく登場人物にまとわせて、適当に駒として動かすような作品には、ほとんど生理的なレベルでの嫌悪感がはたらく。
フィクションなのだから、いくら荒唐無稽な出来事も受け入れよう。
しかし、人間の感情のコアな部分についてまで荒唐無稽になってしまったら、作品としては致命的だと私は思う。
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