5.0
大戦前夜の魔都・上海を舞台にした妖活劇譚
…と聞くだけでわくわくして来ませんか?
私はします、非常にします!
そして、同様にわくわくドキドキする方にはお勧め出来ると思います。
第二次世界大戦を目前に控えた自由都市・上海には多くの人種が集い、享楽に包まれつつも絢爛な喧騒の中にある。
その上海で茶館「白蛇亭」を営む花琳は朗らかで気立ての良い女の子。
実は花琳は伝説の大妖怪・女媧の娘で人と妖の混血であり、茶館の二階で経営する下宿の下宿人は倭国からやって来た特派員、合衆国の諜報員、妖を連れたイタリア人絵描き、流民の混血の占い師…と変わり種揃い。
花琳と、その正体を知る倭国の鬼道師・壱岐島の二人が周りで起こる妖絡みの事件を解決していく中で生じる悲喜こもごもを描いた序盤から、女媧を狙う国々の陰謀渦巻く中盤、花琳を嫁にと乞う“女媧の夫”で“伯父”の伏義が急襲し女媧として生きていくべきと花琳を誘い、花琳もまた上海の人々を助ける為に女媧になろうとする終盤。
日常からシリアスにシフトする中、花琳は人と妖の関りについて考え続けます。
私は、哀しくも愛情に溢れた金花猫のエピソードでこの作品が好きになり、無料分を読み進めてました。
絵もストーリーもキャラクターも丁寧に描かれているので見応えがあると思います。
実は強大な妖である花琳と、彼女を密かに見張る壱岐島の関係も好きです。
花琳を監視対象としながらも、彼女を助け、守らずにはおれない優しさを秘める壱岐島との保護者のようなバディ感が好ましい。
そして!
花琳を慕う下宿人の一人、流民の血を引く美少年占い師・菫雲の登場でコミックス全巻購入に踏み切りました!
いや、純真で花琳が大好きな菫雲がとってもタイプだったんです…。(…)
中盤以降は陰謀に満ちたアクションへシフトするのですが、花琳の優しさと人を愛する気持ちは変わらないので、シリアスな中にも温かさと慈しみが窺えます。
花琳はじめ、各登場人物達の結末も安心して見られるものだと思います。
……例えこれから、上海も含めて世界が戦争という混沌の渦に呑み込まれていくのだとしても。
ただ、花琳と菫雲は今後どうなっていくのかは知りたかった…(笑)。
花琳の正体を知っても変わらず彼女を愛する事が出来た菫雲なら、お似合いの夫婦になれるんじゃないかなと思ってます。
(でも最終巻のおまけペーパーで、菫雲らしき人物とお別れしていると思しき絵もあり?)
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