5.0
ミステリと呼ばないで
今まで読んだどんな漫画とも明確に違う。
面白すぎてびびった。
基本路線はミステリでありながら、話はどんどん脱線していく。
主人公の整(ととのう)君が、関係ないことをしゃべりまくるせいである。
事件の取り調べを受けている最中だろうが、バスジャックの人質になろうが、唯我独尊で脱線しまくる。
何だこいつは。
しかし、この脱線が、たまらなく魅力的である。
本線から遥かに逸脱した会話が楽しい、という意味では、タランティーノの映画のような漫画である。
とにかく整君の呑気なしゃべりが、いちいち鋭く、深い。
人間や社会に対して、独自の視点でもって、目からウロコの核心を提示するその洞察の見事さは、私の文章ではとても説明できない。
これはもう、読んでもらうしかない。
それでいて、「本線」のミステリ部分も、「脱線」を邪魔しない程度にサラッとしていながら、パリッと筋が通っている。
このバランス感覚の素晴らしさ。
ミステリのようで、ミステリではない。
ミステリではないようで、ちゃんとミステリでもある。
ミステリ、と呼ぶのは何かピンとこない、ミステリじゃない、と切り捨てるのも何かもったいない。
ミステリが好きな人にも、苦手な人にも薦められる快作。
誰にでも迷わず薦められる漫画なんて、私にはほとんどない。
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