4.0
絶品シチュエーションコメディ
同じ作者の「てっぺんぐらりん」を先に読んで、それがあまりに素晴らしくて、こっちに飛んできた。
江戸の花魁が現代にタイムスリップする、という非常にわかりやすいシチュエーションコメディなのだが、これがまあ、滅法面白い。
設定としてはとりわけ新しいものではないが、時代のギャップをどう笑いに落としこむか、というセンスが光るのと、一方で、江戸時代の人々が妙に現代に馴染んでしまっている可笑しみもあって、とても楽しく読めた。
また、主人公の花魁が現代の中で「浮いている」様子が、話の筋としてだけではなく、絵柄としても表現されている、という巧みさには、思わず唸った。
背景となる周囲の人々と異なり、花魁の姿だけは、浮世絵風の絵柄で描かれる。
これは非常に漫画的な表現で、映画にも、小説にも、真似が出来ない。
星をひとつ引いたのは、「てっぺんぐらりん」が超越的に凄すぎたのと、もうひとつは、本作のすぐ後で「女の園の星」を読んでしまったせいである。
こういう評価はあまりフェアではないと思いつつ、「女の園の星」を通じて、私は、シチュエーションを作りこむタイプのギャグ漫画より、日常の中から笑いを拾う、という種類のギャグ漫画の方が明確に好きなのだ、ということに気づいてしまったのだった。
そのあたりは当然、本作に責任はない。
全ての作品の評価には、タイミングという運が関わっており、何もかもを客観的に判断し続ける能力は、私にはない。
- 3