5.0
切なさの純度
めちゃくちゃ面白い。
「凪」でも感じたけど、この作者は、人間のちょっとした、でも、すごくクリアで、大切で、絶対に無視できない感情みたいなものを、とんでもないくらいリアルに描く。
その感情が溢れる瞬間を、びびるくらい正確に切り取る。
凄い。
どういう才能なんだ。
いや、ちょっと、言葉に出来ないくらい、本当に凄い。
それでも、読んでいて浮かぶ気持ちに言葉を与えるならば、平凡だけど、「切ない」ということになると思う。
ただ、その切なさの純度が、半端じゃない。
「悲しくて、切ない」とか、「甘く、切ない」とか、「切なくて、やりきれない」とかじゃなく、100%、切ない。
だからその切なさは、突き抜けて、もう、ただ爽やかだ。
読んでよかったなあ。
何だか、足りないものも余計なものも何もなくて、全てが満たされたような気分になった。
ちょうど、人生の特別な場面で、完璧なビールの一杯を飲み干したときみたいに。
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