3.0
加害者になる可能性
「犯罪を論じるときは、自らが被害者になる可能性だけではなく、加害者になる可能性も考えなければならない」と何かの本で読んだ。
私はその主張に完全に同意したわけではないが、その言葉は、ずっと私の中に引っかかっていた。
被害者サイドに立って復讐をする人物を描いた漫画は、いくつか読んだことがある。
しかし、本作のように加害者サイドの家族にスポットを当てた漫画は初めてで、新鮮さは感じた。
その上で、犯罪者を手軽な正義感で裁こうとする社会の狂気は、加害者以上にたちが悪いのではないか、という現代への警鐘を、さらっと鳴らしている。
その挑戦的な姿勢も、嫌いではなかった。
反面、被害者サイドの描写はおろそかで、この漫画のスタンスがフェアだとは言いがたい。
ただ、この立脚点の斬新さと一種の勇気は、評価したいと思った。
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