4.0
慈愛
エリンがカイルに寄せる気持ちは、単なる〈愛情〉じゃなくて、むしろ〈慈愛〉に近いと感じました。孤児院(←作中の名称忘れた……)の子供に接する時と本質はほぼ同じ。心に傷を負ったものたちを、何の見返りも望まず求めず、僅かな打算さえ抱くことなく、ただ温かく癒すだけのような、無償の愛みたいな感じ。
だからこそ、[エリン]というひとりの女性として、愛するカイルから傷つく言葉を何度も投げ掛けられても、その言葉からある意味ポジティブというか、前向きというか……控えめでありながら、且つ、強く大きな真心をより一層、生じ育て抱くことができるのかなぁ…と思いました。
カイルにもまた、同じ性質がありますね。物語序盤で少年に扮した、行き倒れかけのエリンを保護した時の行動を読みながら、何度もつい「わ~、すごく、とても佳い人じゃないか~」と、言ってしまいました。
そんなカイルとエリンだけど、やはりエリンの方がより一層、愛情も懐も広く大きく強く深いですね~まさしく、〈母性本能〉というべきものでしょうか。
カイルが虐待のトラウマにとらわれて、悪夢を見た中のある時に、エリンがうなされているカイルの手を握ったことで、光や温かさを感じたのがきっかけで、エリンを求めたはずなのに、「体の相性がいいだけか」って………[そりゃないだろ~、どういう思考回路してんだカイル!]と、この場面はさすがにツッコミを入れてしまいましたが。
と、まぁ、気づけばとんでもなく長いレビューになってしまい、大変申し訳ありませんが、この作品は〈慈愛〉という要素がとても強く感じられて、私の中ではかなり上位に入る、すごく素敵なお話でした。
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