2.0
それ以外は、何も
色々な漫画のレビューを書いてきて、これを書くのは初めてだが、私は、死_刑制度には反対である。
人道的な見地から、ではない。
国家をそこまで信用していないからだ。
国家には、堂々と人を葬ってよいだけの判断力も資格もないと思っているからだ。
ストーカーに狙われた女子大生の告訴を勝手に取り下げて被害届にすり替え、挙げ句ストーカーに殺させるような国家に、コロナの時代にマスクを配ることを最善の策とするような国家に、人の生き死にを決める能力も権利もあるとは思えないからだ。
その代わりに、個人的な復讐は是認すべきだ、と思っている。
遺族による復讐は、無罪放免でいいだろう、と思っている。
もちろん、復讐の連鎖みたいなことになるのは覚悟の上で、復讐、OK、と。
それが無理なら(まあ無理ですよね)、苦肉の策として、死_刑、しょうがねえかな、と。
この漫画は、遺族による復讐が「報復刑」として制度化された世界での話。
その思いつき自体は悪くないし、多分あり得ないけど、社会制度としても、肯定したい。
しかし、何かを思いつくことと、それを「漫画」にすることは、全く別の話だ。
まず、表現があまりに稚拙に過ぎる。
「こんなクソ高校こっちから辞めてやるよ!」
「真治が先生を殴ったぞ!」
このやりとりで、私はギブアップした。
悪いけど、こういうの、本当に冷める。
なめてんのか、と思ってしまう。
復讐する遺族の側も、あまりに嬉々として復讐していて、違和感が尋常ではない。
あのね、復讐なんて、そんなに楽しくない。
スッキリもしない。
それでも、自分の魂に決着をつける最後の手段として、復讐しかない、という場合は、あるだろう。
でもそれは、この漫画で描かれているような形では、決してないと思う。
あまり人間をなめてはいけないと思う。
思いつきとしては悪くない。
でも、思いつきだけで何とかなるほど、漫画は甘くない。
思いつき以外に、何があったのか。
何もない、と私は思った。
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